どんな商売でもそうですが、安定した経営を続けていくには「数字を読み取る力」が必要です。
特に飲食店を経営する場合「原価率」は経営者が理解しておかなければならない重要事項。
では、原価率はどうして重要なのか?
本記事では飲食店の基本中の基本「原価率」についての詳しい解説と、原価率をコントロールして利益を上げるコツを見ていきます。
目次
飲食店の望ましい原価率は30%
飲食店における「原価」とはフード、ドリンクを作るのにかかった食材、飲料費のこと。
そして「原価率」とは売上に対する原価の比率になります。
焼き鳥を作るのにかかった食材費が30円として、それを100円で売った場合の原価率は「30%」で計算式は以下のとおり
という計算で原価率が出せます。
っで、飲食店における原価率はおおよそ30%が望ましいとされていますが、どんな商品でも一律30%にしなければいけないというわけではありません。
原価率40%を超えるものもあれば15%というものもあり、原価率が高いものはお店が売りにしているものだったりします。
つまり全体で30%が望ましいということ。
営業利益の算出方法
営業利益とは提供するフード、ドリンクにかかった費用と、人件費や賃料、光熱費などを引いた利益です。
本記事ではこの利益を上げるためにはどうしたらいいか?というのがテーマ。ここでは営業利益の算出方法を説明しておきます。
営業利益の算出方法
営業利益は以下の流れで算出されます。
売上-原価=「粗利」
そこからさらに
粗利-販管費=「営業利益」
単純に売上から原価を引いた利益を粗利と言います。
粗利を算出することで「商品がどれだけの利益を出しているか」がわかります。粗利は「売上総利益」とも呼ばれます。
この粗利の算出方法が
売上-原価=「粗利」
フード、ドリンクを売るためにかかった経費のことで「販売費及び一般管理費」と呼ばれます。
販売費及び一般管理費に含まれる経費の例
- 人件費(給料など)
- 店舗賃料
- 通信費(固定電話など)
- 光熱費
- 広告費
- 接待費
- 保険料
- 交通費
原価率を下げて営業利益を上げるコツ
売上-原価=「粗利」
粗利-販管費=「営業利益」
営業利益を上げるためには販管費の削減も重要ですが、その販管費を支払っている「粗利」に注目。
粗利を上げることで営業利益はアップします。そして粗利をあげるには原価率を下げること。
原価率を下げるにはロスを少なくする
ロスというのは仕入れた食材が使われず破棄されることです。
特に飲食業界はこのロスがとても多く、ロスが増えると原価率が上がり、結果営業利益を下げてしまう原因になってしまいます。
ここでは以下の項目を見ていきます。
- ロスが増えると生じるデメリットは何か?
- どうしてロスが出るのか?(ロスの種類)
- ロスを少なくする方法は?
ロスが増えると生じるデメリットは何か?
単純です。「材料が破棄される=材料費が無駄になる」
しかし、飲食業にロスはつきもので、100%ロスを防ぐことはできません。その日のお客さんの来店数や、どんなフード、ドリンクが多く注文されるかは、ある程度予測できても確実にわかるわけではありません。
経費削減のため材料の仕入れにはある程度工夫が必要ということ。
どうしてロスは出るのか?(ロスの種類)
どんなパターンでロスが出ているのか?というと
- 材料が余るロス。
- 発注ミスによるロス。
- オーダーミスによるロス(間違った注文など)
- レシピの分量ミスで生じるオーバーポーションロス。
- 一杯無料などの過剰サービスロス。
- 原因不明のロス。
というようにロスにもあらゆるパターンがあるのを覚えておきましょう。
原因が判明してるロスは未然に防ぐことができるので改善点を見直し積み重なるロスを極力減らしていくことが原価率を下げるコツです。
また原因不明のロスは在庫管理を徹底することで改善できます。次にその方法を見ていきましょう。
ロスを少なくする方法は?
では、ロスを少なくする方法は?というと
在庫管理を徹底するだけで原因不明のロスを改善できます。管理しておくポイントは以下の4項目。
- 仕入れた日はいつか?
- 仕入れた量はどれぐらいか?
- あとどれぐらい残っているか?
- いつまで保存できるか?
いつ、どれぐらいの量を仕入れ、残量はどれぐらいか?を把握しておけば、次に仕入れるタイミングと量の目安になります。※過剰注文を防ぐため。
また、仕入れ日が古いものから使っていくことで賞味期限・消費期限切れによるロスがなくなります。
在庫管理で目安にした仕入れするタイミングと量をさらに徹底します。
「面倒だからまとめて仕入れよう!」と何の計画もないまま仕入れるとロスを増やしてしまう原因となり、それは原価率を上げてしまうことになります。
適切なタイミングで、適切な量を仕入れるには以下のポイントをご覧ください。
・何曜日にどれぐらいのお客さんが来店するか?その日の天気はどうか?で、ある程度予測を立て仕入れる量を決める。量の目安は「これで使い切ると予測した量より20%増しが目安」
・価格変動の激しい野菜類は要注意。現在の価格情報は常に頭に入れて適切な量を発注する。高い時にたくさん仕入れると原価率を上げてしまう原因になります。
・冷凍食品はロスが出にくい。近年では急速冷凍という冷凍技術で新鮮さを損なうことなく解答でき、逆に冷凍したほうが栄養価が高くなる食材もあります(キノコ類やベリー系のフルーツなど)また食中毒対策にもなります。
飲食店で棚卸しは必須!しないと店は潰れる
飲食店の棚卸しは月に一回決めた日にすべての在庫を確認し記録することで「原価率」を正確に出すことができ、経営の状態が見えます。
中には「原価率なんて出さなくても今経営できてるから大丈夫」と考える経営者もいらっしゃいます。いわゆる「どんぶり勘定」というやつですが、こういった経営スタイルは"いつか潰れます"
というのも飲食店の利益は「恐ろしく少ない」からです。
だいたい飲食店経営で最終的に残る利益は10%程度とされていて、90%が経費として飛んでいく計算。
毎月頑張って100万売り上げても利益はたったの10万という驚異的な数字になります。
しかし、棚卸しすることで余分な仕入れや発注を防止でき、回転率の高い食材のチェックや、減らない食材のチェックなど、一目で対処しなければならない改善点を発見することができます。
棚卸しは面倒な作業ですが、これを怠っていると正確な利益と原価率がわからず在庫ロスの防止もできません。
また売れない在庫把握もできず無駄な出費を積み重ねお店を潰してしまう原因となります。どんぶり勘定スタイルの飲食店が3~5年程度で潰れたり、経営難に苦しむ理由はこのため。
「売上はいいのにお金が残っていない」という状態は作ってはならない!ということです。
そのためには棚卸しで在庫把握を徹底し無駄な出費を抑え原価率を下げること。
棚卸しで正確な原価率を出す計算方法
以上の計算方法で正確な原価率を算出できます。
では、この式に数字を当てはめてみましょう。
当月仕入金額は「70万」
当月末在庫金額は「40万」そして売上が300万円の場合で算出すると
「原価率30%」という正確な数字がでます。
っで、この「当月末在庫金額」を確定させることを「棚卸し」と言います。
棚卸しの「管理方法」「調べ方のポイント」
棚卸しは「食材」と「飲料」をわけて調べます。「管理方法」と「調べ方のポイント」を見ていきましょう。
管理は電卓で手書きでも問題ありません。ただし在庫の少ない小さい個人店に限ります。
食材が数百となれば自動で計算してくれる集計ソフトを使います。お金をかけたくない場合はエクセルで計算式をあらかじめ入力しておき数字を入れるだけで自動計算するようにしておけば管理は簡単です。
例えば以下のような表を作り管理します。
業者 | 材料名 | 仕入金額 | 在庫 | 合計金額※1 |
A商店 | A材料 | 200円 | 4 | 800円 |
B商店 | B材料 | 1000円 | 2 | 2000円 |
C商店 | C材料 | 500円 | 3 | 1500円 |
こうして合計金額が出たら原価率を出します。
先月末在庫金額 | 当月末在庫金額(※1) | 売上 | 原価率 |
60万 | 40万 | 300万 | 30% |
調べるものは「食材全般※醤油や塩など調味料もすべて」「ダンボールに入ったままの材料」「仕込中の食材」ちなみに仕込中の食材をきっちり計って計算してる飲食店は少ない。
飲料も同じです。
またカウントする時は数え間違えを防ぐため必ず「手で触って」カウントするようにしましょう。
月末前の大量発注は抑える
月末前に大量に仕入れると「その月の仕入れ金額」が上がってしまいます。
月末の大量発注は控えるようにしましょう。
原価率は平均で30%を目指す
飲食店での原価率は30%が望ましいとされています。しかし価格変動の激しい「食材」については一律30%に抑えることは難しく高くも低くもなり一定の水準を保つことができないというのが現状です。
特に天候に左右されやすい野菜は市場に出回る量が安定せず、時期によっては原価率を大きく上回ることもあります。
では原価率30%は難しいのか?というとそうでもありません。ここで注目してほしいのは「フードとドリンクの原価率の差」
店 | フード | ドリンク |
レストラン | 80% | 20% |
居酒屋 | 60% | 40% |
カフェ・バー | 85% | 15% |
ドリンクはフードに比べ原価率は低く、反対にフードはドリンクに比べ原価率は高くなります。
例えば看板となるメニューを原価率高めで設定し、お客さんにとって魅力的な商品で呼び込みます。
そこに原価率低めの「利益になるメニュー」を設置することで、お店の"魅力度"を低下させず適切な原価率で経営していくことができます。
つまりは単体で原価率30%ではなく「平均して原価率30%」を目指しましょうということ。
適切なメニューバランス図
図を解説します。
- 原価率高めの看板メニューで集客。同時にお客さんの満足度を向上させる。
- おつまみセットなどで客単価をUPさせる。お得な価格でドリンクの杯数が増える。
- 原価率低めのメニューで利益を確保。原価率高めのメニューを補う役割がある。
ポイントは「それぞれがどんな役割をしているか」で、無駄のない配置図となります。
難しいのは利益になるメニューの開発ですね原価率を低く抑え且つ「売れるメニュー」でないといけません。
一般的に原価率が低く売れるメニューと言えば食後のデザートやソフトドリンク(アルコールも種類によるが原価率は低い)があげられます。
利益になるメニューはお店によって違うのでPDCAサイクルは必須です。
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)・・・の略
問題が生じたとき原因を明らかにし、新しく計画し実行していく取り組みで、サイクルを繰り返し続けていく手法のこと。
まとめ
・棚卸しで正確な原価率を把握しておく。
利益を出すためには単純に売上を上げるだけじゃなく、原価率を下げて利益を出すことも大事です。
特に飲食店の原価率はシビアに把握しておく必要があり、これを怠ると「売上はいいのに利益がでない」という事態になるやもしれません。最悪の場合お店が潰れるということも考えられます。
大事なお店を潰さないためにもしっかりと原価率の知識を身につけておきましょう!